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小野瀬雅生氏(クレイジーケンバンド)インタビュー

キング・クリムゾンというバンドがどれだけ人々に影響を与えてきたかを正確に書き示すことは不可能に近い。断続的であったとしても半世紀目前に迫った活動、そしてその活動期間に残された作品は様々な形で人々に影響を与え、聴き続けられてきた。受けた影響も様々だ。ここでは不定期ながら、色々な業界の人々にクリムゾンから影響や音楽観を聴いていこうと思う。

第一回目のゲストをお願いしたのはミュージシャン、小野瀬雅生さん(以下そう親しいわけではないが、親しみを込め“ノッサン”表記)。最も分かりやすい紹介をすれば、かのクレイジーケンバンド(以下CKB)の不動のギタリスト。突っ込みたい気持ちは良く判る。そこだけを切り取ったらキング・クリムゾンからはかなり遠いところで活動しているバンドだ。ただ、ノッサンの場合、CKBの活動に止まらず精力的な活動を展開、クリムゾンとのリンクは自身のリーダーバンド、小野瀬雅生ショウにある。昨年の5月に発表された最新作『カモンレッツゴー』は「スゴツ!」という驚嘆と目の前に超巨大な「?」がゆらゆらと揺れる作品だった。時に人間は自分のキャパシティを超えた体験をすると、力なく愛想笑いをしながら脱力してしまうわけだが、『カモンレッツゴー』はまさにそれ。

強烈なとっちらかりぶりであった。中学生の時に悪い大学生にフランク・ザッパのマザーズ・オブ・インヴェイジョンのアルバムを聴かされた時以来の脱力系感嘆だ。これを文字で説明するのはかなり難儀。というわけで『カモンレッツゴー』の後ろに見え隠れしているアーティストからの直接・間接影響を列記してしまうと、ピンク・フロイドからの四人囃子、フランク・ザッパ、フォーカス時代のヤン・アッカーマン、時に瞬間、ロイ・ブッキャナン憑依、’70年代末のC調ディスコ・ミュージック全般、欧州系気温低めのサーフ・インスト、アシュラ・テンペルとアジテーション・フリーが肩組んできたみたいなジャーマン・エクスペリメンタル・ミュージック、ヘヴィ・メタル全般からのレッド・ツェッペリン回帰、80年代AOR系ロック・バンド・・・そして随所にうっすらクリムゾンの影。見えないでしょ、内容。実際、ぶっ飛んでるんですね。

興味深い作品だったということもあり、都内近郊でライヴを行う度に顔を出していると、昨年の10月の元住吉でのライヴのアンコールで、フォーカスの「シルヴィア」、クリムゾン「レッド」が飛び出したこともあり、話を聞いてみようということになった。

小野瀬:元々はメタル少年でした。ジューダス・プリーストから入って、ハードなサウンドにのめり込んでいった。最初のキング・クリムゾン体験はラジオで聴いた「21世紀のスキッツォイド・マン」でしたね。これは凄いと、すぐにアルバムを聴きましたがその時の印象は、ハードなのはこれだけか、という感じで。「スキッツォイド・マン」以外はフルートが入ったアコースティック・ナンバーや、ドラマティックな曲だった。’70年代の終わり頃、高校生時代に初めて『宮殿』をフルで聴きました。次が『レッド』です。

──10月のライヴではアンコールで「レッド」をやっていましたね。

小野瀬:あの曲はこう言っちゃなんなんですが、そんなに難しくないんです。コピーしていると”あ、簡単だ!と。順番がちょっとややこしいのと、まるまる覚えなければならないところが、面倒ではあるんですけど、そう難しくはない。その後、2曲めの「堕落天使」に興味を持ちました。「弟が生まれて」どうのという歌詞を知り、こういうことも歌になるのかと。

──2016年は’80年代クリムゾンのボックスが発売されたこともあり、’80年代クリムゾンに関してどう思っているか伺いたいんですですが?

小野瀬:’80年代クリムゾンはまさにリアル・タイムなんですよ。(’84年の)来日公演がレーザー・ディスクで発売されていましたが、あれは何度も繰り返し観ました。あの時のラインナップで「太陽と戦慄(パート2)」をやっているんですが、僕はそれで『太陽と戦慄』に戻ったんですよ。それと、誰もがシンセサイザーに走る時代にクリムゾンはシンセでもシンセザイズド・ギターにこだわった。

──使ってましたね。青い筐体のやつね。興味ありました?

小野瀬:ありましたが、当時のロック小僧に手が出る金額ではなかった。でもエイドリアン・ブリューのエフェクターの使い方とかは実に興味深かった。エフェクターの組み合わせでこんな音が出せるんだ、というところに惹かれました。エフェクターもそうでしょうが、彼の場合、アイデアが飛び道具だった。像の鳴き声、サイ、果ては鯨まで。エイドリアンはデイヴィッド・ボウイのツアーに参加していて、「ステイション・トゥ・ステイション」のイントロで、ローランドのJCアンプ(アンプにコーラス・ユニットが搭載されていた。溺愛するミュージシャンも多いが反対に最悪と嫌うミュージシャンもいた不思議なアンプ)でコーラス・エフェクトをかけてフィードバック・サウンドを出していました。僕も使ったことがあったので馴染みのあるサウンドだったのですが、彼はコーラスとヴィブラートの切り替えスイッチをカチカチやって、ギターの音の波形を変えながら興味深いサウンドを作っていた。それを聴いてエイドリアン・ブリューというギタリストの存在を覚えました。その後、トーキング・ヘッズにも在籍し、そしてクリムゾンのメンバーになった。あ、ボウイのバンドにいた人だと思いましたね。

──’80年代クリムゾンの再発に関わる作業をしていて、思ったのが、この時期、時代というのもあるのでしょうが音質が飛躍的に向上していると改めて実感したのですが、この点に関しては?

小野瀬:よく’80年代クリムゾンの音楽を冷たいと言う人がいますが、僕なんかは単にレコーディング技術が向上して、出来上がった音が良くなっただけじゃないのかな、と当時すでに思っていました。冷たいのではなく、高音部のエッジが出るようになった。もちろん楽曲自体にもそのアドバンテージを生かす工夫がされていると思います。

──当時、まわりの人々はクリムゾンどう思ってました?

小野瀬:冷たい、無機質、なにをやっているのかよく分からない。変拍子とかもあったのでね。2本のギターが曲の途中でずれていってまた元に戻るところなんかも、僕はすごく面白かったんですが、普通のリスナーからすると何をやっているのか?と。ドライヴで友達のカーステレオでかけると、やめて、と。アラン・ホールズワースとクリムゾンは嫌がられました。友達筋からは。で、変拍子の話でね、僕のインスト曲で「イカ釣り船」っていう曲があるんですが、この曲、元々、スティーヴ・モーズ(ディープ・パープルのギタリスト、アメリカ人)がアルバート・リー(クラプトンのバンド等で活躍したベテランギタリスト、イギリス人)とカントリー・ロックをやった曲があって、それが気に入っていて、それとクリムゾンの8で収まらず、7とか9拍子になってフレーズがはみ出してしまうところを、今でいう「PPAP」みたいに「ウン!」という感じでくっつけたのが「イカ釣り船」なんです。この曲自体は4拍子ですが、カントリー・ロックっぽいリックが9拍になっていて、演奏しているうちに途中で全部がぴったり合う、あ、これクリムゾンぽいなと(笑)
「イカ釣り船」ってタイトルはケンさん(横山剣)がつけたタイトルなんですよ。曲を弾いていたら、「それ何ていう曲?」と聞かれたので「まだタイトル決まっていない」と答えたら「イカ釣り船にしよう! なんかどんどんイカが釣れて海から上がってくるイメージがある」って(笑)

──プログレッシヴ・ロックを意識するきっかけってなんでした?

小野瀬:なんだろう? 学生の頃、洋楽にどっぷりはまっていた時にヒットしていたのがピンク・フロイドの『炎』で、それはドンズバでした。あのアルバムが自分のギター練習の基礎みたいな存在でした。イエスとかはずっとあとですね。当時は楽譜とかなかったし、耳でコピーするしかなかったので敷居が高かった。ピンク・フロイドは少し難しい音の並びでも聴き込んで、こっちか?いや、こっちかと試行錯誤して、ちょっと頑張ればなんとなく理解できた。フォーカスは雰囲気は好きだったんですが、全然、コピーできないんですよ。速いし、テンション・コードも多い、ベースもどこにいっているのか判らない。ヤン・アッカーマンのソロの部分を一生懸命拾って弾いていたという感じでした。キング・クリムゾンはコピーっていうことになったのは、やはり、’80年代の作品でした。

──コピーするにも難関のような気もしますが?

小野瀬:ステレオの片チャンネル繰り返し聴いてね。こっちはどっちが弾いているんだ、お、こっちが半拍ずれているのか!難しかったんですけどね。でも、’80年代クリムゾンって歌モノが多かったせいもあるんでしょうが、ポップな印象があってね。
ベースのトニー・レヴィンはポール・サイモンのバックをやったり、ジョン・レノンの作品にも参加していたりポップ畑にいた人じゃないですか。だから、クリムゾンにおいてもベースラインは奇妙じゃないんですよ。弾いている楽器は変なんですけど。ギター二人が上でいろんなことやっているので、その部分ではトニーはシンプルに音出ししていて、ギターがなくなるとそこに面白いものを乗っけてくるといった感じで。解りやすいんですよ’80年代クリムゾンは。エイドリアン・ブリューにもそういう面はありますよね。ソロ・アルバムでビートルズの「アイム・ダウン」とかやっていますし。

──『スラック』に収録された「ダイナソー」などまさにそれですよね。ポップでありビートルズ的でもある。

小野瀬:そうですね。『宮殿』でビートルズを首位から降ろしたと言われるバンドがまたビートルズに戻っていったというのも興味深い。 中学時代にビートルズどっぷりだったこともあって、面白いなぁ、と。『スラック』でのピアノの低音部の使い方ってまさにそれだと。『宮殿』のリミックス・ヴァージョンも聴いても下の方でピアノの音がボーンとベースの部分にいるんですよ。何をやっているんだろうと思ったら、上にどんなコードが乗っていようが、コードのルートはここと明確にしている。多分、フリップ先生が強く意識しているんだと思います。上に乗っている部分がどんなに自由になっていてもルートはここだよ、と。僕はクリムゾンはそこがポップだと思います。イエスは、なんていうのかなぁ、クリス・スクワイアが自由に飛び回って、どこがルートだか判らんみたいな場面にたびたび出会いますが、クリムゾンだけはまずはベースだけを追っていくとなんとなく曲の構造が理解できるというのがあります。
 話は飛びますが、先に話した’80年代クリムゾンのレーザーディスクでどの曲かは忘れましたが、イントロ部分でエイドリアンがギターのピックアップのセレクトを間違えるんですよ。すぐに直すんですけど、カメラがパンしてフリップ先生が写ると、見ているんですよ。すごく怖い顔してエイドリアンを。こんなバンド怖くて入れないなぁ、と思いましたね。

最後に小野瀬氏の最新作『カモンレッツゴー』にも触れておきたい。冒頭で書いたようにこの作品飛びっぷりにはなかなか壮絶なものがある。まさに21世紀のスキッツォイド・マン、いやスキッツォイド・ギターマンといった趣だ。そんなアルバムの中で個人的に気に入っているのが、「河童ちゃん」という曲。タイトルだけ見ると脱力系ナンバーかと思ってしまうが、これがよくできているのだ。クリムゾンというより一聴した限りピンク・フロイドを想起させるのだが、実はそれとも何かが違う。ノッサン曰くは、この曲は夏の暑い日に冷房が効いた部屋でギターを弾いていてチューニングをいじっているうちになんとも心地よくたゆとう流れが生まれたのだそうだ。後にそのチューニングはハワイアン等で使われるスラック・キー・チューニングだったことが判明するのだが、その箱庭のようなと表現された曲にノッサンは一匹の河童を住まわせた。その原風景は彼が育ったまだ一面の湿地帯だった昭和の時代の新横浜。ピンク・フロイドと南国のチューニングと昭和の田園風景が心地よく揺れる夢幻の世界。この曲の前に置かれた7拍子のハード・プログレ・ナンバー「遊魔の森」との対比も手伝いアルバムの中でもハイライトとなっていると言っていいだろう。聞くところによれば、この曲、南国、石垣島で局地的なヒットとなり、つい最近、小野瀬雅生ショウのもうひとりのギタリスト、須藤祐くんと石垣島を訪れ、アコースティック・ヴァージョンを現地で披露したという。
ちなみに、この曲「河童」ではなく何故「河童ちゃん」と”ちゃん”づけされているのかはライヴで毎度ノッサンが説明してくれている。小野瀬雅生ショウのライヴ・スケジュールとアルバム『カモンレッツゴー』に関してのインフォは http://official.om-show.com まで。次はインタビュー中にも出た「イカ釣り船」も聴いてみたいものだし、ノッサンがソロ時々デュオでやっているウクレレ・ライヴでやるという噂の「クリムゾン・キングの宮殿」あいざき進也版日本語ヴァージョンも聴いてみたいものだ。

<プロフィール>

小野瀬雅生
クレイジーケンバンド リードギタリスト
1962年横浜生まれ。

変幻自在なギタープレイでクレイジーケンバンドのサウンドを支える「ハマのギター大魔神」。自らのリーダーバンド”小野瀬雅生ショウ”では70年代ロック色の濃いプレイを披露し、リードボーカルも担当。また、高級・B級を問わぬ食べ歩き家でもあり、ブログ「世界の果てで天丼を喰らうの逆襲」では日々様々な食体験を紹介中。
http://ameblo.jp/onose-masao/

<リリース情報>

小野瀬雅生ショウ「カモンレッツゴー」発売中!
MTKS-0001 2016.06 会場販売価格¥3,000

結成15周年を迎える小野瀬雅生ショウ、待望のニューアルバム。
歌もの、インスト、のっさんのソロインストありの全14トラック計69分で大満腹! OMS初のデジパック仕様となり、アートワークは気鋭のデザイナー 高熊俊介氏が担当。そしてイラストは、かつてMUSIC MAGAZINE の表紙を5年以上にわたり手がけ、現在は数多くの有名媒体で活躍中のサイトウユウスケ氏が担当。

(小野瀬雅生ショウ、小野瀬ソロなどのライヴ会場と一部クレイジーケンバンドのライヴ会場にて販売。通販CRAZY KEN's SYNDICATE ONLINE SHOPでも取り扱い中。)
※CDショップでのお取り扱いはございません。

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